盗聴法<組対法>に反対する市民連絡会 >
   

【声明】
空港での全身透視スキャナー導入に反対します

盗聴法に反対する市民連絡会

日本消費者連盟 TEL 03-5155-4765
ネットワーク反監視プロジェクト TEL 070-5553-5495

2010年1月19日


 
昨年12月25日に米国で起きた航空機爆破未遂事件をきっかけに、米国政府は、搭乗者の身体検査強化のために、後方散乱X線を用いて、ほぼヌード写真に等しいような裸体の画像を着衣のまま取得する全身透視スキャナーの導入を決めました。その後、同種のスキャナーによる身体検査がカナダ、イギリス、オランダ、イタリアなどEU諸国にも広がりはじめています。
しかし、他方で、こうした検査の導入に懐疑的な立場をベルギー、スペインなどが表明しており、ドイツも対応にいくつかの条件をつけるなど対応が分かれています。
全身透視スキャナーの導入について、「テロ対策ならしかたがない」といった消極的な容認の声があることをマスコミなどが報じていますが、しかし、以下で述べるように、監視強化は、テロ対策としては効果はなく、むしろ私たちのプライバシーの権利のみが一方的に侵害されることになるという点を強調しておきたいと思います。この点も含め、私たちは、以下の理由により、導入を決定した米国政府等はもとより、今後導入を検討している各国政府に対しても、導入しないよう強く求めるものです。また、導入の是非について、公式に態度表明していない日本政府に対しても、今後とも導入しないことを明確にすることを求めます。

(1)裸同然の画像データを取得することは、あきらかにプライバシーの侵害です。既にテロ対策と称して昨年から日本版のUS-VISIT(米国出入国管理システム)が実施され、入国する外国人から顔認識、指紋の採取がおこなわれています。私たちはUS-VISITの導入は必ずや更なる個人の生体情報の侵害に拡大するのではないかと危惧してきましたが、いま、それが全身透視スキャナー問題として現実化しよう
としています。
(2)全身透視スキャナーはX線を使用することから、放射線による人体への影響が危惧されます。ごく微量であると報じられていますが、自然界にある放射線に”加えて”ごく微量といえども、人によってはかなりの頻度で照射されることにたいする人体への影響がまったくないという保証はありません。
(3)プライバシー権で保護されるべき個人情報が電子情報としてコンピュータ上に蓄積されるため、技術的にその二次使用等が容易であって、将来にわたり、個人の思想信条やプライバシーの権利を侵害するような使用がなされない保証はありません。
(4)全身透視スキャナーによって、少量の液体や非金属物質などが検知されるかどうか不明であり、「テロ対策」としての有効性が疑問であり、プライバシーの権利だけが一方的に侵害される結果をまねきかねません。
(5)「テロ対策」のために、個人の生体情報や経歴、人間関係などの情報を網羅的に収集するといった厳格な監視システムの導入は、市民的自由など人権を大きく制限する一方で「テロ対策」としての実効性は極めて疑わしいものです。

以上から、導入を決定した米国政府等はもとより、今後導入を検討している各国政府に対しても、導入しないよう強く求めるものです。また、導入の是非について、公式に態度表明していない日本政府に対しても、今後とも導入しないことをすることを求めます。
さらに私たちは、こうした全身透視スキャナーを導入する背景となっている各国政府の「テロ対策」の基本的な考え方の転換を求めます。全身透視スキャナーを導入しようとする米国など各国政府の考え方は、個人の身体や履歴などありとあらゆる情報を収集し、思想信条を調査して「テロリスト」の疑いのある者を網羅的に排除ないしは隔離する発想に基づいています。私たちは、こうした発想が維持される限り、全身透視スキャナーの導入は、さらにより深刻なプライバシーの権利を侵害する個人への監視システムの導入をもたらし、結果的には、際限のない監視システムの肥大化と基本的な人権のさらなる侵害を招くと考えます。したがって、私たちは、このような網羅的な監視にもとづくテロ対策という発想そのものを放棄することを強く求めます。

私たちは、米国をはじめとする先進諸国による軍事力行使や国家安全保障政策が、自国の利益のために国内外の民衆を犠牲にし、世界を戦争と紛争の危機に陥れている最大の原因であると考えます。私たち日本に住む者にとって、米軍基地を多数かかえた沖縄や日本各地の米軍基地が、米兵犯罪をもたらし、民衆の生存の権利をよりいっそう危うくする元凶となってきたことを知っています。こうした米軍による犯罪行為や非人道的な行為が世界中にみられることも知っています。また、自衛隊の海外派兵は、現地の人々の安全を保障するよりも、むしろ紛争を長期化させ、現地の人々の不安全を拡大してきました。これらこそが、世界中で米国など先進諸国への敵意を醸成しつづけてきました。武力行使や監視強化によるテロ対策こそがテロの最大の原因になっているのです。

「テロ対策」を理由に、移民や少数民族、外国籍の人々、思想信条や宗教上のマイノリティ、政府に反対する活動家などを網羅的に監視して予防的に取り締まることは「テロ対策」にはなりません。軍事力や経済力を背景にみずからの利益を世界におしつけるような米国をはじめとする先進国の外交・安全保障政策そのものを転換することこそが、世界の人々の平和に寄与する唯一の道であることを改めて表明します。