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【資料】 共謀罪に反対する声明・意見書

 
■共謀罪新設についての意見 日本労働弁護団 2003年7月9日
     

  共謀罪新設についての意見

2003年7月9日

日本労働弁護団
幹事長 鴨田哲郎

第1 意見の趣旨

 当弁護団は、「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」において共謀罪を新設することには断固反対である。仮に、国連条約批准のためにやむをえないとしても同条約の目的に従い、共謀罪の対象を「国際的な組織犯罪」に限定するべきである。

第2 意見の理由

1 はじめに
  政府は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下「条約」という)の批准のために国内法整備が必要であるとして、「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下「法律案」という)を今国会に上程している。
  しかし、法律案は条約批准に必要な範囲を著しく超えて、全ての団体活動を対象に、500を超える広範な行為を新たに犯罪とするものであり、しかも実行行為を必要としない。これは刑法総則の変更と実質的に同義であり、実行行為を処罰の対象とするという近代刑法の理念を揺るがすものである。
  この法律案が成立すると、団体活動として行われている労働組合活動や争議団行動が犯罪とされ、憲法で保障されている労働者の団結権、交渉権、争議権が不当に侵害される恐れがある。法律案は全ての「団体」に関係するものであるが、当弁護団は労働組合等の活動の視点から意見を述べるものである。

2 無限定かつ広汎な共謀罪自体の問題点
  法律案は、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀」することのみを構成要件と定めている。すなわち、法律案が目的とする「国際的な組織犯罪」防止に限定せず、労働組合等を含む全ての団体を対象にその活動について、共謀罪として処罰することとしているのである。
  しかし、そもそも条約は「国際的な組織犯罪の防止」のためのものであるから、「国際的な組織犯罪」とは縁もゆかりもない団体の活動まで犯罪とする立法を求めていると考えるのは不合理であり、また、かかる立法事実が存しないことは法務省当局も認めるところである。
  法律案は長期4年以上の自由刑にあたる罪について共謀罪を新設しようとするものであるが、現行法上500を超える犯罪が該当する。このように多くの犯罪について、共謀罪を新設する必要性はなく、かえって市民生活を萎縮させるものである。また、かかる立法が「国際的な組織犯罪」の防止に資するとは考えられない。

3 労働組合等活動に対する影響
  共謀罪は、労働組合・争議団活動の弾圧に用いられる危険性が極めて高い。もとより労働組合活動は、労働者の労働条件の向上を目的とし、憲法上保障された労働基本権(団結権、団体交渉権、争議権)を行使することで、その実現を目指すものである。
  しかし、労働組合やその活動を嫌悪する使用者が、労働組合もしくは組合員の組合活動を「犯罪」として告訴・告発し、警察権力が使用者と一体となって組合員を逮捕・勾留し、さらには公判請求するなど、刑法を「活用」して組合活動を妨害する例は近時においても決して珍しいことではない。しかも、このような「犯罪」がしばしば使用者によって「デッチ上げ」られることすらある。例えば、国鉄の民営化の直前に起こされた「横浜貨車区人材活用センター事件」では、国鉄当局の管理職制らによって、国労組合員による傷害等のデッチ上げが事前に共謀されていたことが刑事判決によっても認定されている(同事件で、検察官から証拠として提出された録音テープに、管理職制が国労組合員を挑発することなどを内容とする事前謀議が録音されていた)。
  もし、共謀罪が新設されれば、たとえ「犯罪」行為が行われていなくても、「犯罪」行為の実行について何らかのかたちで相談したというだけで、共謀罪に該るとして逮捕・勾留・起訴等の対象とされる危険がある。しかも、共謀についての捜査の必要を名目に、盗聴、盗撮、スパイ潜入、虚偽自白強要のための事情聴取などの形で、組合活動の全般が「合法的に」警察の監視下に置かれることになる。

4 労働組合活動において共謀罪の適用が想定される具体的場面
  労働組合等は、その活動内容を執行委員会、三役会議、共闘会議等において集団的討議を経て決定し、実行するものであるから団体性と組織性という共謀罪の構成要件は常に満たしている。
(1)要求に誠実に対応するまで団体交渉を継続すると決議した場合は、逮捕監禁罪(刑法220条、組織犯罪法3条1項2号)の共謀罪に該当するとされる危険がある。
(2)親会社・持株会社や取引先、金融機関等に要請行動を行い面会を求めることを決議した場合、強要罪(組織犯罪法3条1項5号・刑法223条)の共謀罪に該当するとされる危険がある。
(3)労働組合や争議団がビラまきや街頭宣伝を行うことを決定した場合、信用毀損や業務妨害罪(組織犯罪法3条1項7号・刑法233条)の共謀罪に該当するとされる危険がある。
(4)退職金の上積みや解決金支払いを要求することを決定すれば恐喝罪(刑法249条、組織犯罪法3条1項10号)の共謀罪に該当するとされる危険がある。
(5)また、近時の経済情勢を反映して、賃金・退職金等の労働債権の支払すらなされないままに企業が倒産する事例が跡を断たないが、このようなケースにおいては、労働者が労働債権や雇用の確保を目指し、事業の存続を図るために事業場を占有したり、会社資産の散逸を妨ぐためにこれを一時的に組合の管理下においたりすることもある。このような活動を行おうと決議すると、威力業務妨害罪(組織犯罪法3条1項8号・刑法234条)、さらには、本法律案の刑法の改正部分である強制執行妨害目的財産損壊罪(改正組織犯罪法案3条1項2号・改正刑法案96条の2)、強制執行行為妨害罪(改正組織犯罪法案3条1項3号・改正刑法案同96条の3)、強制執行関係売却妨害(改正組織犯罪法案3条1項4号・改正刑法案同96の4)の共謀罪に該当するとされる危険がある(なお、強制執行妨害罪の強化・新設については、当弁護団の2003年4月14日意見を参照されたい)。

5 まとめ
  以上のような労働組合活動は、憲法で保障された労働基本権の行使であり何ら犯罪に該当しないものである。しかし、使用者と警察権力による、いわゆる刑事弾圧は、犯罪の取締りや有罪判決を主目的とするのではなく、労働組合の分裂・弱体化や世論の離反を狙って行われるものである。
  執行委員会等における討議、決定だけで共謀罪なる犯罪が成立することとなれば、組合や組合員の一挙手一投足が捜査の対象とされ、いつでも自由に刑事弾圧を加えうることになる危険は高い。
  このようなことになれば、労働基本権を保障した憲法は空文と化し、労働組合活動が圧殺されることは火を見るより明らかである。
  よって、当弁護団は、共謀罪の新設に強く反対するものである。
  また、仮に、国連条約批准のためにやむをえないとしても、同条約の目的に従い、対象を「国際的な組織犯罪」のみに限定するよう強く求めるものである。

以上