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【資料】 共謀罪に反対する声明・意見書

 
■「共謀罪」の立法化に反対する声明 自由人権協会 2003年6月23日
     

 

2003年6月23日

東京都港区愛宕1-6-7
愛宕山弁護士ビル306号
社団法人自由人権協会

代表理事 更田義彦
同 弘中惇一郎
同 紙谷雅子 
同 田中宏

「共謀罪」の立法化に反対する声明

 自由人権協会は、犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(以下「本法案」という)における共謀罪が、1)その対象を組織犯罪集団の関与する犯罪であって越境的な性質を有する犯罪に限定していない、2)その成立には「合意を推進する行為」、すなわち、犯罪の準備行為を必要としていないなど、犯罪の構成要件が極めて広くかつ不明確であるので、本法案に対し、基本的人権保障上の観点から、反対する。

 政府は、今国会に、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「犯罪防止条約」という)の批准に伴う国内法を整備する必要があるなどとして国会に本法案を提出し、その成立を図っている。

 ところで周知のとおり、犯罪防止条約は、マフィアなどの国境を越える組織犯罪集団の犯罪を効果的に防止することを目的に起草され、条約の適用対象とする犯罪は原則として「性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するもの」(以下「越境組織犯罪」という)に限定している(条約3条)。

 しかるに、本法案による共謀罪は、長期4年以上の刑を定める犯罪(その数は計560以上を数えるという)について、これらの犯罪が「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者」を処罰するものであり、本法案は、越境組織犯罪に限らず、広範な犯罪を予防する「保安立法」となっている。

 すなわち、本法案による共謀罪は(1)対象犯罪が国際的なもの、すなわち国境を越えるものであること(「越境性」という)を要件としておらず、(2)単に団体の活動として、組織により行われる犯罪としているにとどまり、組織的な犯罪集団が関与するものであることを要件としておらず、(3)犯罪の遂行を共謀すれば足りるとしており、他に合意に基づく準備行為、すなわち「合意の内容を推進する行為」(例えば、他人に電話をするとか、凶器を買うといった犯罪の準備行為)を要しないとしている。

 したがって、本法案によれば、単に、団体内の個人間で犯罪について、いわば意思の合致があったという事実だけから、原則として懲役2年以下、死刑・無期・長期10年以上の犯罪の「共謀」については、懲役5年以下に処せられることとなる。

 第1に、犯罪防止条約の批准に伴い国内法を定めるのであれば、犯罪の「越境性」を要件とすべきである。この点について、法務省は条約34条2項の文言をもとにその必要がないとしているが、犯罪防止条約の起草の経緯と同条約3条、34条の解釈に関する注釈をもとに、国内法において、犯罪の越境性を要件とするべきであるとする見解も有力である。

 第2に、犯罪防止条約では、共謀罪について、国内法上、合意の内容を推進する行為(予備的・準備的行為)を伴い、または組織的な犯罪集団が関与することを要件とすることができるとしていた(条約5条)。

 もともと本法案における共謀罪の立案は、犯罪防止条約5条が条約加盟国に組織犯罪集団への参加罪または共謀罪のいずれかを国内法上整備することを義務づけていることによるものであり、現に法制審議会において法務省の担当官は、本法案による共謀罪の新設は、国内にこのような拡大処罰規定を必要とする状況が存在することによるものではなく、犯罪防止条約(2000)の批准のためである旨説明したと言われている。

 ところが、本法案による共謀罪は、立法形式としては犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の改正の形式をとっているが、前記のとおり極めて広範かつ多様な犯罪について、それが団体の行為として行われる場合に適用されるのであるから、実際上は、刑法総則を変更したのとほとんど異ならない効果をもたらすものと考えられる。

 従来、犯罪は、実行の着手があってはじめて未遂罪として処罰する場合があるとされており、実行の着手以前の段階において、予備・準備が処罰されるのは、殺人、強盗、爆弾関係などの重大な犯罪に限定されていた。アメリカ、ヨーロッパ諸国における共謀罪においても、その実質は、「顕示行為」、すなわち準備行為を必要とするという考えが一般的である。

 ところが、本法案における共謀罪が成立したときは、現実に個人あるいは社会の利益を侵害する行為以前の段階で、反社会的な意思を持つこと自体を犯罪とみなすことによって、処罰の段階を著しく早期化することになる。このように本法案は「犯罪の国際化及び組織化対策」やテロ対策の名の下に、ほとんどの国民が全く知らない間に、処罰の時期を早められ、処罰の範囲を飛躍的に拡大するような実質的には刑法の全面改正を実行しようとするものといわざるを得ない。

 仮に共謀罪が制定されれば、警察の捜査のあり方も変わらざるを得ない。犯罪の立証のために被害から出発するのではなく、人々の会話や電話やメールそのものの中味が犯罪となるのである。本法案による共謀罪が盗聴法の適用範囲の拡大、室内盗聴の導入、サイバー犯罪条約で導入が提案されているメールの保全・リアルタイム傍受等の捜査権限拡大につながることは必至である。とくに犯罪の実行着手前に自首したときは刑は減免されるとしていることなどから、「共犯者」の虚偽の自白により冤罪を生むおそれもなしとしない。

 以上のとおり、本法案には、基本的人権保障の観点から重大な懸念があり、犯罪防止条約の批准に伴い国内法の整備が必要であるとしても、本法案による共謀罪については、とうてい許容できないので、反対する。

以上のとおり、声明する。