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【資料】 共謀罪の廃案を求める声明

 
■共謀罪は廃案しかありません 盗聴法(組織的犯罪対策法)に反対する市民連絡会
    2005年5月12日
     

 

盗聴法(組織的犯罪対策法)に反対する市民連絡会

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実際の犯罪行為を伴わない、話し合うことが罪になる共謀罪は、思想の自由、言論・表現の自由を侵害する悪法以外のなにものでもありません。
違憲の悪法といわれ、それ故に一度も団体適用をすることができなかった破防法以上に問題のある法律です。
私たちは、話し合うことを罪とする言論規制法、市民活動規制法=共謀罪は廃案しかありえない、と考えています。

政府・法務省は、共謀罪に反対する声の高まりのなかで、修正協議に野党を引き込むことで、共謀罪の成立をはかろうとしています。
こうした政府・法務省の修正協議に応じ、共謀罪の危険性を「制限」しようとする動きもあると聞いています。
私たちは、共謀罪に関して修正はありえない、廃案しかないということを強く訴えます。

戦後の刑法体系をくつがえす共謀罪

第一に、共謀罪に準備行為、すなわち予備行為を要件とすることで、思想の処罰の危険性を避けようとする修正の動きについてですが、これは、なんら思想の自由、言論・表現の自由の侵害を防止するものではないばかりか、戦後の法体系のバランスを根底からくつがえすものといわざるをえません。
予備行為は、犯罪の実現である既遂、犯罪に着手したが実現できなかった未遂以前の段階の、実行の着手にはいたらない準備行為のことです。日本の刑法は犯罪の実現である既遂犯の処罰を原則としながら、例外的に未遂(かなり広範に未遂犯処罰規定がある)を、ごく例外的に予備、陰謀を処罰しています。総則に書かれていないことからも明らかなように刑法は原則として予備・陰謀を処罰の対象とはしていません。それゆえ予備罪の対象となっているのは内乱罪、外患罪、放火罪、殺人罪、強盗罪などの重大な犯罪に限られています。因みに観念的には予備より更に前の段階である陰謀罪の対象は内乱罪、外患罪などにしぼられています。
2003年の刑法犯認知件数2,790,136件ですが、そのうち既遂は2,631,865件、未遂は158,144件、予備は127件となっています。陰謀罪は0件です。予備の内訳は殺人22件、強盗74件、放火31件です。この件数は既遂の処罰を原則とし、例外的に未遂を、ごく例外的に予備を処罰するという日本の刑法の考え方を反映しているものといえます。
話し合うことが罪になる共謀罪の新設が認められたら、日本の刑法体系は根本からくつがえされることになるでしょう。

共謀罪は言論取り締まり法

共謀罪の対象犯罪は、いわゆる犯罪である刑法にかぎらない消費税法、水道法、道路交通法など日常生活に関係する法律も含め560種類にものぼっています。これら560種類もの犯罪に予備を要件とする共謀罪が新設されたならば、未遂犯の規定のない多くの法律が改正を迫られることは疑いありません。予備的行為をともなう共謀が罰せられ、未遂が処罰されないということは考えられないからです。
更に、決定的ことは、共謀罪の要件に予備行為を加えたとしても、ある行為を共謀罪で問うには行為者の意図・目的がやはり重要な役割を演ずることになるということです。殺人事件を例にとれば、包丁を買うという行為自体は日常的な適法な行為であり全く問題ありませんが、それが殺人の共謀罪に問われるのは殺人のためにという目的がなければ成立しません。つまり、共謀罪の要件に予備を加えたとしても犯罪の「合意」ということが大前提になっています。犯罪の「合意」ということが大前提である以上、共謀罪は予備的行為を要件としたとしても、実行行為の着手がない以上思想の処罰と表裏一体の関係にあります。共謀罪は、修正を加えようと、言論・表現の自由を規制し、思想の自由を規制する悪法であることになんらかわりありません。

共謀罪は市民活動取締法

第二に、共謀罪が組織的犯罪行為を対象とするものであり、市民団体、労働団体などを規制するものではないということについてですが、私たちは、共謀罪は市民の当然な活動を規制する団体活動取締り法にほかならないと考えています。
近年、組織的犯罪対策のためといわれる法律は、犯罪対策の名の下に市民団体、労働団体の活動を規制しようとする性格をますます強めてきているといっても過言ではありません。
組織的犯罪という場合の団体概念が曖昧になり、近年の規定は全ての団体を包摂するようになってきています。
団体規制法の是非はともかくとして、団体なり、組織の規定をそれなりに厳密にしようとしたのは、破防法、暴力団対策法、オウム対策法までといえます。1999年制定の組織的犯罪対策法を転回点としてガラリとかわり、共謀罪の新設をもって団体概念は完全に空洞化するものになるといえます。

破防法(破壊活動防止法 1952年制定)の場合

団体とは「特定の共同目的を実現するための多数人の継続的結合体または連合体」 (破防法第4条)とされ、その「団体が団体の活動として」暴力主義的破壊活動をおこない、更に破壊活動をする恐れが十分にあると認められる場合は団体規制(第5条)をできるとしています。破防法は団体適用のためには政治性、団体性、反復性という三つの要件が必要であるとしています。

暴力団対策法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、1991年制定)の場合

暴力団対策法は、破防法が団体適用の要件を厳しすぎているとし、もっと簡単に団体規制をできるようにするためとして、暴力団対策の名の下につくられた団体規制法です。しかし、この法律でさえ適用対象の団体定義は、それなりに限定的です。対象とされる団体は、法律名に示されるように暴力団とされ、同法の適用される団体は、同法第3条で、1 組員が当該暴力団の威力を利用し生計を維持している、2 犯罪の前歴者が一定比率以上しめる、3 組が階層的に構成されている、という三つの要件をみたさなくてはならないとされています。
オウム対策法(無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律、1999年制定)の場合オウム対策法も破防法の厳格な適用要件をいかにゆるやかにするかという観点からつくられていますが、団体の定義は破防法と同じ規定になっています。オウム対策法第4条は、団体定義は破防法と同じく「特定の共同目的を実現するための多数人の継続的結合体または連合体」とし、その団体が団体の活動として破防法で規定する暴力主義的破壊活動である「無差別大量殺人行為」を行ったとき、団体規制を行うことができるとしています。適用要件は反復性をはずすなど破防法と比較すると大幅に緩和されています。

左翼団体取締りから全ての団体を対象へ

ところが1999年に制定された組織的犯罪対策法から団体定義は大きく変わります。つまり市民団体、労働団体などを明確に射程に入れた定義になってきます。
組対法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律、1999年制定)の場合組対法第2条は、団体を「共同の目的を有する多人数の継続的結合体であって、その目的又は意志を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮系統に基づき、あらかじめ定められた任務の分担にしたがって構成員が一体として行動する結合体)により反復して行われるもの」としています。
一見、破防法やオウム対策法と似ているかのような規定になっていますが、全く異なります。破防法などは「特定の共同目的を有する」としていますが、組対法からは「特定の」がなくなり「共同の目的を有する」になっています。この「特定の」は、暴力主義的破壊活動と連動し、政治目的をもつ、つまり政治上の主義、主張をもつという意味です。この「特定の共同目的」をもつ団体とは、共産党や左翼団体などをさしていました。
組対法は、団体の定義から、政治性をなくし、明確に市民団体から労働団体など全ての団体を対象とする、団体取締法へと変容したといえます。

共謀罪の場合

法案で共謀を犯罪とする条件として、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの」と組対法の団体定義を踏襲しています。しかし、政府・法務省が共謀罪の新設の理由としている「国連越境組織犯罪防止条約」の団体・組織定義は実に曖昧なものであり、法務省の説明は簡単に信用できません。
条約は第二条で「組織的犯罪集団」とは、三人以上からなる組織された集団で、金銭的利益や物質的利益を得るため、一定期間継続して存在し、犯罪のために協力をして行動するものといい、「組織された集団」とは、犯罪の即時実行のために偶然組織されものでない集団であれば、構成員にきまった役割や継続性、階層的構造をもっていなくともよいとされています。
共謀罪新設の根拠とされる条約では、組織的犯罪対策の対象は、団体や組織よりさらに不定形の集団にまで拡大されています。対象に「共同の目的」はなくなり、金銭や物質的利益、つまり儲けを得る集団であればよいことになります。これはサークル以上に広い集まりを対象とししているといってもよいでしょう。

私たちは、共謀罪は思想の自由、言論・表現並びに結社の自由を侵害する危険極まりない悪法であり、また市民の活動の自由な展開を阻害する団体取締り法であり、同法の修正はありえず、廃案以外ないと確信しています。